TOKUSHIMA UNIVERSITY Digital Fabrication PROJECT
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TOKUSHIMA UNIVERSITY Digital Fabricaion PROJECT

伝統をメイク

CONCEPT

3つのメイクと技術。

徳島では、「人形浄瑠璃」という三人で一体の人形を操る世界でもめずらしい人形芝居が何百年にもわたって受け継がれてきました。江戸時代に吉野川一帯で花開き人々に広く親しまれてきたことから、人形を遣い演じる人形遣いやセリフ音楽を担当する太夫・三味線、人形を作る人形師など、高い技術を持つ匠が集積した地でもありました。
「伝統をメイク」は、この地方の文化と伝統を未来につなぐために、3年の構想を経て、2015年、先端技術と匠の技・知恵を集めて立ち上がった徳島大学発のプロジェクトです。新しい時代を生きる人々と伝統文化の接点が薄れる今、デジタル工作機械でものづくりをするデジタル・ファブリケーションの力で、浄瑠璃人形の保存、継承、そして新しい価値の創造に取り組みます。

01“ものづくり”のメイク

人形浄瑠璃の創作ムーブメントを生み出すためにまずは浄瑠璃人形の3Dデータを提供することを考えました。3Dデータがあれば、だれでもどこにいても浄瑠璃人形を生み出せる、そんな世界を目指しています。

徳島大学 浮田浩行講師が自身の研究テーマである3Dスキャンの統合技術を応用し浄瑠璃人形の3Dデータ制作技術を開発しました。また3Dスキャナーでは計測できない頭内部のカラクリは、現代の名工である人形師 甘利洋一郎さんにカラクリを観察できる特別な木偶を作っていただき仕組みの理解に役立てました。その上で、現在手に入りやすい素材だけを用いて近しい動きを再現できる首部分の独自のカラクリを構築しています。

現在の3Dスキャナーは最高品質のマシンでも、浄瑠璃人形の繊細な凹凸表現を精緻に読み込むにはまだ精度が足りません。将来の技術革新が3Dスキャナーによる3Dデータ生成の完全自動化を叶える日がいつかやってくるでしょう。しかし、今はゆるやかな凹凸の再現に止まってしまうのです。この技術的ハードルは、地元の技術者 赤澤晃さんの高精度なデータ加工技術によって乗り越えることができました。このように、浄瑠璃人形の3Dデータは多くの人の試行錯誤と熱意によって生み出され、日々アップデートされています。

これまでに、徳島で多く上演され親しみの深いお七とお鶴データが作られました。また2019年には徳島大学の大学生で結成されたチームA.BA座が、お鶴データを改変してオリジナルの男子大学生人形 初くんを誕生させました。また、演じる際に必要となる、手足、肩板、胴輪データは徳島大学生 河野太樹さんが3D CADを用いて制作、希少な着物の布は、TechShop Tokyoにご協力いただき最先端の大判布プリンターで出力し再現するなど、創作の輪が広がっています。

02人形が備える“感性”のメイク

3Dプリンターで打ち出した浄瑠璃人形は真っ白なキャンバスです。伝統的な人形に筆を入れることは恐れ多く勇気がいることかもしれません。しかし3Dプリンターがあれば何度でも失敗ができます。まるで自分の顔をメイクするように、作り手の感性を込めたメイクを人形に施せる、そんな経験を通して、浄瑠璃人形との距離を縮めることを目指しています。

はじめに私たちは、資生堂のトップヘアメイクアップアーティスト 計良宏文さんにご協力いただき、お七にヘアメイクを施していただきました。それまで作品としてマネキンなどにヘアメイクを施すことはあったものの、頭が人間よりも小さい浄瑠璃人形にメイクするのは初めての経験だったという計良さん。熟練のメイク技術による新しい挑戦によって現代的な可愛らしさと美しさの共存する表情のお七が生まれることになりました。

その後計良さんを講師として、浄瑠璃人形にヘアとメイクアップで感性を与える技術を中高生や大学生に伝授するワークショップを行ってきました。これまでに中高生が思い思いにメイクしたお鶴や大学生が制作した初くんに若い感性が反映されています。

03“今”の文化を創造するメイク

新しく創作された浄瑠璃人形はお芝居へもインスピレーションを与えるようになりました。国内外で活躍する人形遣いの勘緑さんは、作詞家の高橋久美子さん、作曲家の平本正宏さんと共に、この時代に新しく生まれた人形たちの意味を問い、新しい物語と公演作品を次々と生み出しています。

彼らの創作人形浄瑠璃のムーブメントは、大学生にも伝わり、授業や課外活動でのコラボレーションが始まりました。2020年には、徳島大学生が監督となり初くんを題材とした初めてのYoutube作品を公開しました。

素材の特性から生まれる動きもあります。木材よりも軽量で壊れても修復ができるプラスチック素材は、浄瑠璃人形を持ち上げる動作を容易にし、ロックで激しい動きが演技に取り入れられるようになりました。また初めて浄瑠璃人形を遣う人や子どもたちにとって人形の重量や大きさは大きなハードルでしたが、3Dデータの改編によって軽量化や小型化が容易にできるようになったことで、これまで人形を遣ったことのない人々が浄瑠璃人形を遣い、これまでになかった現代的な動作を生み出すなど、表現の幅を広げるきっかけに繋がっています。

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