人形浄瑠璃の創作ムーブメントを生み出すためにまずは浄瑠璃人形の3Dデータを提供することを考えました。3Dデータがあれば、だれでもどこにいても浄瑠璃人形を生み出せる、そんな世界を目指しています。
徳島大学 浮田浩行講師が自身の研究テーマである3Dスキャンの統合技術を応用し浄瑠璃人形の3Dデータ制作技術を開発しました。また3Dスキャナーでは計測できない頭内部のカラクリは、現代の名工である人形師 甘利洋一郎さんにカラクリを観察できる特別な木偶を作っていただき仕組みの理解に役立てました。その上で、現在手に入りやすい素材だけを用いて近しい動きを再現できる首部分の独自のカラクリを構築しています。
現在の3Dスキャナーは最高品質のマシンでも、浄瑠璃人形の繊細な凹凸表現を精緻に読み込むにはまだ精度が足りません。将来の技術革新が3Dスキャナーによる3Dデータ生成の完全自動化を叶える日がいつかやってくるでしょう。しかし、今はゆるやかな凹凸の再現に止まってしまうのです。この技術的ハードルは、地元の技術者 赤澤晃さんの高精度なデータ加工技術によって乗り越えることができました。このように、浄瑠璃人形の3Dデータは多くの人の試行錯誤と熱意によって生み出され、日々アップデートされています。
これまでに、徳島で多く上演され親しみの深いお七とお鶴データが作られました。また2019年には徳島大学の大学生で結成されたチームA.BA座が、お鶴データを改変してオリジナルの男子大学生人形 初くんを誕生させました。また、演じる際に必要となる、手足、肩板、胴輪データは徳島大学生 河野太樹さんが3D CADを用いて制作、希少な着物の布は、TechShop Tokyoにご協力いただき最先端の大判布プリンターで出力し再現するなど、創作の輪が広がっています。